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突き指は引っぱって治せ!?

突き指は引っぱって治せ!?

野市中央病院 上田 英輝

スポーツをしていれば誰しも一度は突き指を経験することでしょう。
その時、古い指導者さんや先輩方からは「引っぱっとけば治る」なんて言われた事があるかもしれませんね。ところが突き指もピンからキリまであって、軽微なものから手術まで必要な大怪我も含まれています。
頻度が多いところから言うと、指先の関節(DIP関節)で生じるのはマレット指です。マレットは「木槌」のことを指し、指先を伸ばせず曲がったままの状態から名付けられました。DIP関節を伸ばす腱が切れたり、付着部で骨折を起こしている状態ですので、いくら引っぱっても曲がったままです。骨折であれば手術で治すことができますが、腱が切れた場合は縫合手術してもうまくいかないことが多々あります。


次に多いのは真ん中の関節(PIP関節)の脱臼です。ボールなどがあたって背側に弾かれた時によく生じ、見た目にも指先があらぬ方向を向いて動かせないのですぐに診断はつきます。このタイプは引っぱればすぐに治すことが「できます」。
ただし、関節が抜けてしまう以上、靭帯や軟骨損傷、腱損傷を伴っている事が多いので、自信がないアスリート(自信ある人なんて少数でしょう)は整形外科医によって整復してもらい、きちんと検査も受けることを勧めます。

一方でボールが正面から当たるとか、転倒時に指を突き込むとか、指の長軸方向に文字通り「突き指」する場合に、PIP関節では骨折していることがよくあります。軸圧によって関節が壊れるので指の怪我としては重症です。これこそ「引っぱっとけば治る」では絶対に済まされない怪我です。外傷専門医、手の外科専門医によって適切な治療がなされないと関節が固まってしまい、スポーツどころか日常生活にも支障を残してしまう場合があります。


臨床の世界ではほとんどの突き指は軽症でいつの間にか治っているという事が多いのですが、少なくても怪我した時に「とりあえず引っぱっておく」は無しです。特に指の形がいつもと違って見える場合には骨折や脱臼しているので、専門医に見せなければなりません。その場合も慌てずアイシングをしつつ、なにか硬いもので軽く添え木をして、心臓より高く上げた状態で整形外科を受診してください。
たかが突き指、されど突き指です。受傷して見た目に変形している場合は必ず病院を受診しましょう。