> スポーツ現場での超音波診断装置(エコー)活用方法

スポーツ現場での超音波診断装置(エコー)活用方法

スポーツ現場での超音波診断装置(エコー)活用方法

スポーツドクター 廣瀬 大祐(ひろせ整形外科リハビリテーションクリニック)

 「いつスポーツ復帰できますか?」 この問いに正確に答えることは本当に難しいことです。同じような障害・外傷でも、損傷の程度は千差万別ですし、回復程度は日々の変化の観察が必要です。
スポーツ復帰を確実にするためには、スポーツ損傷を早期にかつ的確に診断し、最適な治療を選択すること、治癒過程を観察し、機能評価することが必要です。
 超音波診断装置(エコー)は診断・治療・観察・機能評価などを可能とする有用なツールです。エコーは軟部組織や骨・軟骨の微細な変化、血流、動態の評価が可能で、機器の小型化によってスポーツ現場で使用されることにより、損傷部位の可視化を実現しました。
 もちろん、レントゲン(X線)や磁気共鳴画像診断(MRI)でしかわからないこともあります。関節のアライメントを診る場合はX線が必要ですし、MRIも腰椎分離症の早期診断に使うように骨の内部まで観察することができます。
 具体的なエコーの使用法として、肉離れ、腱・靭帯の断裂の診断には非常に有用です。
 肉離れの中には筋肉内に血液が貯留するものがあり、この場合は早い段階に血液を穿刺し圧迫固定することにより、治癒が早くなり、後遺症を残しにくくなります。靭帯断裂の場合も受傷早期にその詳細な場所や出血など周囲の状況含め診断することができます。骨の場合は明らかな骨折より、“ヒビ”や疲労骨折といった、初期にはX線では分かりにくい病態に威力を発揮します。また、野球肘などは超早期に診断が可能なことから、野球検診などでも使用されています。
 治療にはエコーを使って損傷場所を特定した精度の高いエコーガイド下注射によって、慢性スポーツ障害の治療にも威力を発揮しています。
 ハイドロリリースもエコーガイド下に行います。小さな注射針をエコーを用いて筋肉と筋肉の間や、皮下脂肪と筋肉の間にすすめ、少量の生理食塩水や麻酔薬を注射します。筋肉同士の動きがスムーズになり、筋膜リリースとも呼ばれています。
 治療経過の評価にはX線を何回も撮影すると被曝の問題がありますし、MRIは高価で診断に時間が必要です。その点、エコーは胎児の診察に使うように被曝の心配は全くなく、繰り返し使用することができます。また、肩や肘など実際に動かしながら評価することができます。スポーツドクターだけではなく理学療法士などアスレチックトレーナーが利用することによってその評価を共有できます。
 最近は小型で持ち運べる機種でも画像は非常に綺麗、高画質になっています。