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スポーツ医・科学Q&A

スポーツ医・科学Q&A

スポーツ選手・保護者・指導者からの疑問や質問をお寄せください。


スポーツ選手にとっては毎日の厳しい練習や試合の中で、このトレーニングで間違いないのか、障害防止にはどのようなトレーニングやストレッチをしたらいいのか、この薬はドーピング規則違反になるのかならないのか、また、緊張しプレッシャーがかかり本番に弱い等、不安なことや疑問点が出てくるのではないでしょうか。そんな不安や疑問を少しでも解消するお手伝いをさせていただきます。

スポーツ医・科学委員会のメンバーが回答し、このコーナーへ掲載します。内容によっては回答(掲載)できない場合や質問内容の一部を変更させていただく場合がございますので、あらかじめご了承ください。

トレーニング方法

Q

持久力を高めるトレーニングで中距離走を実施しています。走り終えた後、選手がすぐにしゃがみ込みますが、直後は歩くなり徐々に心拍や呼吸を落ち着けさせた方が、循環器への負担を考えれば望ましいと思うのですが、どうでしょうか。

(カヌー・男性)

A

ご質問ありがとうございます。激しい運動を行うと交感神経(全身の活動を上昇させる神経)の働きが亢進し、心臓から拍出される血液量(心拍出量)は増加します。拍出された血液は手足の筋肉(骨格筋)に集められ、骨格筋の血管は拡張されることで血液量が増加した状態になります。一方で脳や内臓の血流は減っている状態となっています。
運動をやめると副交感神経(全身の活動を鎮静させる神経)が働き、心拍出量が減ってきますが、ここで急に運動をやめると、心拍出量が減ったにも関わらず、まだ骨格筋に血流がたまったままとなり、脳への血流が不足することになります。そうすると、めまいや吐き気、失神を起こす危険性が出てきます。
ご指摘の通り、激しい運動の後は、急に運動をやめるのではなく、軽くジョギングしたり歩いたりして心拍をゆっくり下げ、骨格筋に増えた血流を減らし、脳への血流を上げていくことが望ましいと思います。また血中に貯まった乳酸の濃度を減らす働きもありますので、運動後はクールダウンを行うことをお勧めします。

喜安克仁(高知大学医学部付属病院)

食事や栄養

Q

スポーツ選手が炭酸飲料を飲むことは、競技パフォーマンスを落とす(瞬発力がなくなる)ということを選手時代に当時の指導者から聞いたことがあり摂取を控えていましたが、医科学的見地のはっきりした根拠はあるのでしょうか。

(カヌー・男性)

A

ご質問ありがとうございます。 炭酸飲料に含まれている「炭酸」ではなく炭酸飲料に多量に含まれている「糖分」が問題です。食事以外で余分な糖質を摂ってしまうと、肥満につながるだけでなく、食事前に摂取すると血糖値が上がって、食欲がなくなる原因となります。食事量が抑えられると必要な栄養素が不足する場合があります。炭酸飲料はタイミングや量を考えて飲むと疲労回復に役立ちます。

大坪豊寿(スポーツ栄養士・田中整形外科)

Q

中学生の指導をしています。日々の練習に加えて、具体的にどのような食生活の指導をしていけば、生徒たちの成長をより促すことができるでしょうか?食が細い生徒が多いのですが、より科学的根拠がある指導ができれば、生徒の意識も変化すると考えます。

(ソフトボール・男性)

A

質問ありがとうございます。まずは、毎日3食しっかり食べることと場合によっては補食を摂ることです。毎食の食事は主食・主菜・副菜・果物・乳製品を揃えることがポイントです。そうすることで食事バランスが整います。補食はお菓子やジュースではなく、おにぎり・果物・乳製品がおすすめです。中高生ではなかなか揃えることが難しいので、保護者の協力が不可欠になります。食が細い学生さんは1回で食べる量に限界があるので、補食を摂ることと少しずつ食事の量を増やしていく指導をお願いします。中高生時期は男女とも食事摂取量が少ないと疲労骨折や貧血になる可能性が高いことも分かっています。また、成長を促すには充分な睡眠時間の確保が必要です。

大坪豊寿(スポーツ栄養士・田中整形外科)

薬・サプリメント

Q

日本で有名メーカーのプロテインやサプリメントを最近購入しました。しかし商品にWADA認定商品という表示がありませんが、ドーピングに抵触する商品に該当しますか?以前受講したドーピング講習では、日本製のサプリメントは大丈夫であるとも聞いたのですが?

(空手道・男性)

A

ご質問ありがとうございます。 サプリメントについて回答させていただきます。 サプリメントが原因といわれるドーピング違反が日本でも、また世界でも報告されています。 サプリメントや栄養ドリンクは、医薬品とは異なり、「食品」に分類されています。医薬品は成分が明確に記載されていますが、「食品」には商品の原材料を全て記載する義務がありません。食品にはラベルやパッケージに記載されていない物質が含まれている可能性があるということになります。特に海外製品は表記されていない禁止物質が混入しているケースが多く報告されていますが、国内製品でも入っていないとは言いきれないのが現状です。 WADA、国際オリンピック委員会もアスリートの体づくりやコンディショニングにおいて、必要な栄養はバランスの良い食事から摂取することを推奨しています。 もし、表示されていない物質が原因で、アンチ・ドーピングのルール違反となった場合でも、アスリートはその責任を自身でとらなくてはならなくなります。表示されていない、確認できない物質が入っている可能性があるというリスクを十分理解したうえで、本当にそのサプリメントが必要なのかを考えていただければと思います。

公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構(JADA)は、WADAの定める禁止リストには接触しないサプリメントの認定商品を「JADA認証」として定め、JADAマークの普及を進めていましたが、様々な事情により2019年3月で廃止となっています。(猶予期間は2020年3月31日まで) JADAは新たに「スポーツにおけるサプリメントの製品情報公開の枠組みに関するガイドライン」を策定しており、それに対応した形で各企業からドーピング禁止物質分析サービスが開始され分析結果が公開されている商品も出てきています。ただし、ガイドラインには「リスク低減のための指標であり、完全な安全を保障するものではない」と記載されています。

長﨑大武(スポーツファーマシスト・プラス薬局)