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2026禁止表国際基準 主な変更点の要約

2026禁止表国際基準 主な変更点の要約

スポーツファーマシスト 長﨑 大武(ブロード調剤薬局 神田店)

 2026年1月1日より、World Anti-Doping Agency(世界アンチ・ドーピング機構)の2026年禁止表(Prohibited List)が適用されています。 毎年少しずつ内容が見直されますが、2026年版では医薬品の使い方・新しい治療薬・機器使用・検査現場での運用など、より実務的な改定が行われました。 ここでは、2025年版からの主な変更点をわかりやすく簡単に解説します。 変更点は赤字(または強調表示)で記載しています。

①ステロイド系物質の禁止対象がより明確に

S1.蛋白同化薬:S1.1蛋白同化男性化ステロイド薬(AAS)に「類似の化学構造又は類似の生物学的効果を有するもの(エステル類を含む)
→似た化学構造を持つ物質やエステル体も禁止対象であることが明文化されました。成分名の見た目だけで安全と判断してはいけません。
海外製のサプリメントや個人輸入品では蛋白同化薬混入のリスクがあるため特に注意が必要となります。

②吸入サルメテロールは量だけでなく間隔にも注意

S3.ベータ2作動薬:吸入サルメテロール(24時間で最大200µg、(いかなる用量から開始しても8時間で100µgを超えないこと
→国内で承認されている吸入サルメテロールで考えた場合、1日投与量は200µgであるため、用法・用量を守れば禁止表で示す1日量は超えませんが、投与間隔は注意が必要となります。国内の用法・用量は1日2回となっており、アスリートの感覚で投与間隔を短縮してしまうと、8時間ごとに100µgを超えてしまう危険性があります。
総量だけでなく、時間あたり投与量管理も重要となったということです。

③採血や献血が禁止ではないことを整理

M1.血液および血液成分の操作:M1.1.自己血、他者血(同種血)、異種血又はすべての赤血球製剤をいかなる量でも循環系へ投与するあるいは再び戻すこと。
 血液または血液成分の採取[アフェレーシス(成分採血)を含む]は以下の目的で行われる場合を除く
 1)医学的検査やドーピング・コントロールを含む分析目的、または、
 2)その国における関連規制当局から認定を受けた血液センターにおける提供目的

→2025年には注意書きとして記載されていた内容が、新たに整理され記載されています。医学的検査目的やドーピング検査における血液採取や分析目的あるいは献血目的については禁止されないということを示しています。

④一酸化炭素(CO)を使う特殊装置が新たに禁止対象

M1.4.一酸化炭素を供給するための再呼吸システムまたは装置の使用は、医学または化学の専門家による監視下で診断手段として実施される場合を除き禁止される
という項目が新たに追加されました。
→一酸化炭素の使用が、特定の条件下において赤血球の生成を促進する可能性があるため禁止対象となりました。あくまでも競技力向上目的の不正使用防止が目的です。

⑤遺伝子・細胞ドーピングの表現を整理象

M3遺伝子および細胞ドーピング:M3.2.正常なあるいは遺伝子改変細胞または、細胞構成成分(核、ミトコンドリアやリボソームのような細胞小器官等)の使用。
→こちらは内容の変更があったわけではなく、実際の遺伝子研究等で使用される用語に合わせた表現修正です。「核、ミトコンドリアやリボソームのような細胞小器官等」の文言も追加されています。

⑥禁止物質分類の説明補強

以下のカテゴリーで例示や注釈が追加されました。
・S2.ペプチドホルモン、成長因子、関連物質、および模倣物質
・S4.ホルモン調整薬および代謝調整薬
・S6.興奮薬
→禁止対象がわかりやすくなり「知らなかった」は通用しなくなっています。

⑦ウォッシュアウト期間の表の脚注部分

S9.糖質コルチコイド:***徐放性糖質コルチコイド製剤の使用は、全身吸収が持続するため、ウォッシュアウト期間後も検出可能な糖質コルチコイドレベルで残存する可能性がある。
新たな記載が追加されました。
→ウォッシュアウト期間(体内から抜ける目安)の脚注に、徐放性製剤は体内に長く残る可能性があることが追記されました。
気になる場合は、医師やスポーツファーマシストに相談してください。



禁止表は毎年見直され、内容も少しずつ変化しています。
アスリートや指導者は、「知らなかった」では済まされない時代です。
薬やサプリメントを使用する際は、最新情報を確認し、必要に応じて専門家へ相談しましょう。