MLBのドーピング問題とスポーツの価値
スポーツ医・科学 委員会
MLBのドーピング問題とスポーツの価値
スポーツファーマシスト 長﨑 大武(プラス薬局)
MLB(メジャーリーグベースボール)で大活躍されている大谷翔平選手の話題が続いていましたので、私もMLBに関係した内容を書いてみたいと思います。
プロ野球の世界は厳しい実力主義の社会であり、選手の評価はその年のパフォーマンスに基づいて年俸で明確に反映されます。日本のプロ野球も非常に厳しい世界ではありますが、世界で最高峰のプロ野球リーグであるMLBはもっと厳しい世界です。
全てのスポーツでドーピング問題は重要な課題となっていますが、MLBでもドーピングは大きな問題となっています。
特に1990年代から2000年初頭にかけてはMLBのドーピング問題は深刻化し「ステロイド時代」と呼ばれる暗黒期と知られており、大きな社会的関心を集めた深刻な問題となりました。
ステロイドとは医療目的では本当に様々な治療に使用されている薬剤ですが、ドーピングでは筋肉増強目的で使われることが多い薬剤です。
なぜドーピングが広がったのか?ということですが、一番は成績向上のためと思われます。その他にも薬物検査体制が未整備であることや、薬物の入手が容易であったなど社会背景もあったようです。
2003年に罰則なしの実質的なドーピング検査が導入され、2004年以降から大規模かつ詳細なドーピング検査制度が導入されています。
その後、様々な事件や暴露などがあり、年々罰則が強化されたことやアンチ・ドーピングに関する教育によって、現在ではドーピング違反は大幅に減少しています。
しかし今なお「ステロイド時代」の成績や評価については議論されており、スポーツの価値が問われています。
アンチ・ドーピングがなぜ必要かをまとめてみました。
1.フェアプレー(公平性)の維持
・スポーツは「平等な条件で競い合う」ことが基本。
・ドーピングは不正な手段で運動能力を高める。
・公正な勝負が保障されなければ、スポーツの価値自体が損なわれる。
2.アスリートの健康と命を守る
・多くの禁止薬物は身体や精神に深刻な害をもたらす。
3.スポーツの信頼と価値の保護
・スポーツそのものに対する社会の信頼を失う原因となる。
4.次世代への教育と模範
・アンチ・ドーピングは「スポーツのあるべき姿」を未来に継承する行為。
アンチ・ドーピングとは単に「取り締まる」行為ではありません。
アスリートの健康を守り、スポーツの価値を守り、未来の世代の希望を守る、非常に重要な意味を持っていると思い、私たちは活動を続けています。
皆さんが、アンチ・ドーピングに関して少しでも興味を持っていただけましたら幸いです。
クリーンなスポーツを楽しみましょう!!
※全てのステロイド薬がドーピング違反に該当するわけではありません。
違反となる期間もあります。場合によってはTUEの申請が必要となることもあります。
薬剤に関する問い合わせは各県に設置されているホットラインをご利用ください。
※ドーピング禁止薬に関する問い合わせについて
高知県薬剤師会ホットラインでは、選手や監督等の競技関係者や医療関係者からのドーピング禁止物質・禁止方法に関するお問い合わせを受け付けております。
問い合わせをされる場合は記入用紙をご利用ください。
高知県薬剤師会ホットライン用「ドーピング禁止薬に関する問合せ用紙」はこちら