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「ニュートラルな背骨に戻す」

「ニュートラルな背骨に戻す」

アスレティックトレーナー 中森 徹

 ニュートラルとは中立的や中間的という意味です。車を運転される方であればご存知、“N”と表記されている前進や後退するギアに入れていない状態を示します。これはどちらのギアにも入れる準備ができている状態とも言えます。
 背骨は、身体を前屈させる・反らせるという前後(矢状面)の動きと左右に傾ける(前額面)動き、回旋する(水平面)の3次元で動かすことができます。背骨は頭側から頚椎・胸椎・腰椎に分けられ、それぞれ得意とする動きはありますが、どの動きもできる準備状態の自然なS字カーブを描く背骨がニュートラルな背骨です。骨盤も腰椎の下部に位置するため、その傾きは腰椎のカーブに影響を受けます。
 全員が立った姿勢でニュートラルな背骨であれば、本来の動きをしやすい身体と言えます。しかしストレスを過剰に感じやすい現代社会では、ニュートラルでない状態となっている方が多く、腰痛や四肢の障害を訴えられます。また競技指導をされている先生方からは選手の動きがぎこちないことから改善について相談を受けることが多くありますが、原因の1つとして、ニュートラルにできていないことが背景にあります。
 2022年11月にスポーツドクター藤田先生の豆知識にも「しゃがめないスポーツ選手」というタイトルで、しゃがめない理由の1つとして脊椎の動きについて指摘されています。問題を抱えている選手の脊柱はカーブが過剰、もしくは少なく、ニュートラルな背骨になっていないことが多いように感じます。
 今回はニュートラルな背骨に戻すためのエクササイズを紹介し、それぞれのポイントをお伝えします。

①矢状面の動き:キャット & カウ

キャット
背骨全体を丸める。背中だけでなく腰も丸める。

カウ
背骨全体を反らせる。首を長く保ち、背中を反らせ、胸を前方に向ける。

②前額面の動き:ワグ・ザ・テイル(尻尾振り)

背骨を側屈させ、同側の肩と骨盤を近づける。両肩を結ぶラインと骨盤のラインの傾きを同程度とする。

③水平面の動き:体幹絞り

開始姿勢
両肘を肩の高さとし、前方・上方から見た時、両肘同士が直線となる姿勢を作る。

両肘を結んだ直線を維持したまま、肩を回旋させ、反対方向に骨盤を回旋させる。



さて、この3方向のエクササイズを行った後、立った時の姿勢はどのようになっているでしょうか。感覚として、どの部位も頑張っておらず、ちょこんと立っているようになっていませんか。3次元の動作すべてを均等に行うと、ニュートラルの背骨が出来上がります。この姿勢から猫背姿勢を作ると、違和感を覚えるかと思います。
 緊張している部位に対して、ストレッチという方法がとられることが多く、そのゴールや変化が分からないと訴えられる方が多いように感じます。ニュートラルに戻すことをゴールとし、動きながら戻すという手法も効果的です。
 仕事や勉強の姿勢は偏りやすく、その時間も長くなります。ちょっとした合間時間に、スポーツをされる方は運動前後にこのエクササイズを行って、ニュートラルな背骨に戻してみませんか。