アイシングとRICE処置からPOLICE処置へ
スポーツ医・科学 委員会
アイシングとRICE処置からPOLICE処置へ
理学療法士 木下雄介(介護複合施設 輝)
<アイシングの歴史>
寒冷療法は、古代ギリシャ、ローマで雪と天然の氷を使って医学的治療をしたことが始まりとされる。1881年、冷湿布が手術の補助手段として認められ、1950年初頭、冷却が急性外傷の応急処置の場面で効果があると認識され始め、スポーツ外傷の日常的管理に冷却が用いられるようになった。60年代後半にはAT(アスレティックトレーナー)らは、急性外傷後の24~72時間は冷却、その後は温熱を使用するようになった。
(Knight KL:クライオセラピー.田淵健一(監修).Book House HD、1997)
スポーツ現場では、損傷の程度に関わらず「怪我をしたらまずはアイシングをする」という考え方が一般的になっています。アイシングの生理的作用により炎症や腫脹の抑制、鎮痛作用、筋スパズムの軽減が期待され、現場でもその恩恵を実感できることがあります(選手の好みも踏まえる。アイシングが苦手な選手もいる)。しかしアイシングの効果に関する十分な根拠は示されていないことからアイシングをしすぎではないか?不要ではないか?との議論もあがっております。
研究報告では足関節の捻挫で、早期のアイシングは遅れてのアイシング、早期温熱療法と比較して早期にフィールドでの復帰トレーニングが可能になったとの報告や又、障害の程度、重篤な筋損傷であればアイシングにより回復が遅くなってしまう、軽微な筋損傷であればアイシングによって筋再生を促進できる等の研究も報告されております。今後はより明確な理論や方法が確立されるのではと思っております。
急性期のケガ、例えば肉離れをしたとか、捻挫をして靭帯損傷しているといった場合、昔ながらの対象法でいわゆる、
<RICE処置>
(Rest安静、Ice冷却、Compression圧迫、Elevation挙上)があります。今や沢山の方がご存じかと思います。しかし、必要以上の安静だけでは悪影響を及ぼす事から現在は、
<POLICE処置>
(Protection保護、Optimal Loadings最適負荷、Ice冷却、Compression圧迫、Elevation挙上) の対応が広がっています。日本は学生スポーツが盛んでありますが、傷害に対して管理や助言ができる理学療法士やトレーナーが学校やクラブに常駐していることが少ないことから、適切な対応が困難なケースが多々あると思います。受傷をしたときは速やかに医療機関を受診し医師からの診断・治療、理学療法士やトレーナーからの助言や管理、特にPOLICEのOptimal Loadings最適負荷は早期復帰の為にも専門家の意見を聞いて行うことが重要かと思います。