「オリンピックとドーピング」
スポーツ医・科学 委員会
「オリンピックとドーピング」
スポーツファーマシスト 長﨑 大武(プラス薬局)
今年の7月末からパリ・オリンピックが、また8月末からはパラリンピックが開催されます。
オリンピックはスポーツの世界最高峰の一つでもあります。世界中のアスリートが日々切磋琢磨し、夢を叶えることができる場所。しかしその陰にはドーピングの問題があります。
今回は「オリンピックとドーピング」についてまとめてみたいと思います。
まず初めに、ただ単純に「薬剤摂取=ドーピング」ではないことをお伝えしたいと思います。病気などでお薬が必要な場合は当然摂取すべきことです。故意ではなくてもドーピング違反になる可能性があるため、お薬を摂取している方は専門家にご相談ください。
ドーピングとは?
ドーピングとは「スポーツにおいて禁止されている物質や方法によって競技力を高め、意図的に自分だけが優位に立ち、勝利を得ようとする行為」のことと記載されています。一般的には禁止物質を意図的に使用することだけをドーピングと考えるかもしれませんが、ルールに反する様々な競技能力を高める「方法」や、それらの行為を「隠すこと」も含めてドーピングとされています。
ドーピングが禁止されている理由は?
フェアプレーの精神に反する。
競技者の健康と安全を守るため。
反社会的行為である。
上記の行動はどれもスポーツの価値を損なうことに繋がるためドーピングは禁止されています。
オリンピックとアンチ・ドーピングの歴史
1960年のローマ・オリンピック競技大会において、ドーピングによるアスリートの死亡事故が起こったことでドーピングを取り締まる動きが起こったとされています。
国際オリンピック委員会はスポーツにおいて禁止する物質のリストを定めて、1968年グルノーブル冬季オリンピック競技大会、メキシコ夏季オリンピック競技大会からドーピング検査を実施したとされています。しかしまだその当時は、競技種目や国や地域を越えて統一されたルールが存在していなかったようです。
その後1999年に世界アンチ・ドーピング機構(WADA)が設立され、アンチ・ドーピングの統一ルールである「世界アンチ・ドーピング規程(Code)」が採用されたのは2004年のアテネ・オリンピック競技大会が初めてのオリンピック大会となります。
東京オリンピックでのドーピング
東京オリンピック公式HPの報告書では、すべての選手を対象者とし、オリンピックでは合計6200検体(OCT:2145検体、ICT:4055検体)、パラリンピックでは合計1500検体(OCT:600検体、ICT:900検体)を採取したと記録されています(東京オリンピック・パラリンピック競技大会公式報告書より)。大会期間1か月半という短い期間に日本国内で行われるドーピング検査の1年分の検体数を超えるドーピング検査数となるそうです。
残念ながら東京オリンピックでもドーピング違反が出ています。メダルの剥奪もありました。
数年前の大会での禁止物質によるドーピング規則違反が今になってわかる?
国際基準では、採取した検体は最長10年間保管することができます。分析技術の発達・向上によって、当時検出されなかった禁止物質の存在が数年後の再分析によって明らかになることがあります(JADAホームページより)。
東京オリンピックのドーピング違反数が、これからまだ増える可能性もあります。
巧妙化するドーピングも見逃されません。
いつか「ドーピング違反ゼロ」のオリンピック報告を聞いてみたいと思います。
パリオリンピック・パラリンピックでは高知県出身の選手もいます。
みんなで応援しましょう!!
がんばれ日本! がんばれ高知!!