夏の体調管理について
スポーツ医・科学 委員会
夏の体調管理について
図南病院 整形外科 藤田 幸子
私たちの暮らす高知県は四国の南に位置し、北は四国山地、南は太平洋に面しており、東の室戸岬と西の足摺岬を結ぶ土佐湾をいだいて、東西に細長い扇状の形をしています。夏には土佐湾沖を流れる黒潮上をわたる湿った気流が四国山地に吹き付け、山間部では日本でも有数な降雨をもたらしますし、内陸部や海岸部では、急激な気温上昇が起こり連日、晴天が続きます。また、内陸部では、強い日射で雷雲が発達して、突然バケツをひっくり返したような夕立がおこることもしばしばです。7月半ばの梅雨明けからは本格的な高温多湿の猛暑が始まり、日中は肌に照りつける強い日射しに体力を奪われて、夜は熱帯夜が続いて、老若男女、誰もが熱中症のリスクにさらされます。日本スポーツ協会では、熱中症予防の運動指針として、気温、湿度、輻射熱の3つを取り入れた、『暑さ指数』(WBGT)を提唱しています。
この指標は、運動指針だけでなく、作業や日常生活でも熱中症予防の指針とされています。しかし、この指標は環境のリスクを示すものなので、スポーツ選手の体調や、スポーツの種類によるトレーニングについては、選手自身やコーチの管理が重要です。熱帯夜が続くと睡眠不足になり、食欲も落ち、疲労感が増し、体力が落ちますし、『暑さ指数』が安全でも、休息せずに、激しい運動を続けると、体温が上昇し、脱水が進み、熱中症に至らなくても、持久力が低下し、判断力も低下して十分なパフォーマンスが出来なくなります。まず、自分で出来る体調管理としては、
①毎朝起床時に、体温と体重を測定しましょう。出来れば、運動前後に測定記録し、体重の変化を計算しましょう。スポーツ前後や間に水分をこまめに取っていても、体重が運動前より減っていれば、発汗量(水分補給の参考値)と考えて水分補給すること。例えば、体重が60キロであれば、体重の2%以下、1.2キロ以内までの体重減少が目安になります。それ以上の体重減少は、水分補給を増やしましょう。体重が増えていれば、水分の取り過ぎと考えられます。脱水には、水分だけ不足する場合(水欠乏性脱水)、水分とナトリウムイオンが不足する場合(混合性脱水)、水分とナトリウムイオン両方不足した時に水分のみ補給した場合(ナトリウム欠乏性脱水)の3つがありますが、激しいスポーツ時は、混合性脱水なので水分だけを補給しても脱水になります。ミネラルや糖分の入ったスポーツドリンクを摂取しましょう。また、一度に大量の水分補給は、お腹が張ったり腹痛の原因になるので、こまめに水分補給しましょう。
②皮膚の血流の増加(顔や身体が真っ赤になる)や発汗は、汗が蒸発する際、体温をさげる作用がありますが、湿度が高いと汗が蒸発せず体温はますます上昇します。体温を下げるため身体冷却、首回りや四肢や体幹をアイスパックや送風で身体の表面を冷やしたりアイススラリーのような飲料水を用いることも推奨されています。しかし、アイシングのタイミングは重要で、筋肉や関節が冷えて、パフォーマンスの悪影響にもなりえます。
成人と違って、思春期前の子供では、生理的に発汗機能も未発達ですし、成人以上に猛暑は過酷なストレスになります。青少年では、睡眠環境や食事管理などのトータルコンディショニングには、保護者や指導者のサポートが重要なことは言うまでもありません。
今年の夏、体力の低下、免疫力の低下に留意し、感染対策も忘れずに充実したスポーツを楽しめるように、さあ準備しましょう。