COVID-19に感染した後のスポーツ復帰
スポーツ医・科学 委員会
COVID-19に感染した後のスポーツ復帰
野市中央病院 上田 英輝
コロナウイルス感染症は全世界で大変な猛威を振るいましたが、最近ではその威力も低下したと判断され、日本でも感染症法分類第5類にランクダウンされています。
とはいえ感染した場合には発熱して体のだるさ、頭痛、のどの痛み、咳、鼻水、味覚や嗅覚の異常などの呼吸器症状を中心に発症して、回復してきても疲労感、倦怠感、関節痛、筋肉痛といった様々な罹患後症状(後遺症)に悩まされることがあると報告されています。
では、アスリートが感染した場合にどのようにしてスポーツ復帰していけばよいのでしょうか。日本臨床スポーツ医学会から「スポーツ復帰指針」が示されています。
それによると(図表)、無症状〜軽症であった場合は発症から2週間は完全休止として、2〜4週で段階的解除、4週以降に制限解除するとされています。入院して酸素療法が必要であった場合は発症後6週から制限解除とされており、やはり重症度に応じて安静期間を長く取ったほうが良いとされています。特に集中治療を要したような重症例では命に関わる事態もありえるので、復帰は長いスパンで考えざるを得ません。
活動再開の際に問題となるのは呼吸器症状と循環器症状です。そのため復帰に当たっては呼吸機能評価や心電図検査し評価しておくべきとされています、トップアスリートでは各競技団体において検診プログラムが整備されています。一般のアスリートでは軽症で自覚症状が残っていなければ酸素飽和度のチェックを受ける程度で良いですが、強化指定選手であればかかりつけ医やスポーツドクターに相談して、胸部の単純X線撮影や心電図検査、各種メディカルチェックを受けておくべきでしょう。
中程度〜重症であったのなら心血管系の評価は必須となり、主治医およびスポーツドクターと綿密な計画を立てる必要があります。運動強度が強いスポーツでは突然死のリスクがあるとされています。さらに薬物治療継続が必要な場合はドーピング規定に該当しない薬剤を選択する必要があります。
また先の後遺症に悩まされることも数%程度にあり、倦怠感などの身体症状に加え、意欲・集中力の低下が伴うと罹患前ほどのパフォーマンスが出なくなり、抑うつになる例も見られているようです。これはアスリートに限りませんが、自分ひとりで悩まずまずは周辺に相談をしてメンタルカウンセリングを受けることが必要です。
日本臨床スポーツ医学会HPより
https://www.rinspo.jp/files/topics/topics210507.pdf