> スポーツ医・科学委員会 > 姿勢を良くする

姿勢を良くする

姿勢を良くする

アスレティックトレーナー 中森 徹

◇姿勢を良くしたい
 高知県スポーツ科学センターで体力測定やトレーニングサポートを受けられる際、『姿勢を良くしたいです。』という選手や、保護者から『うちの子の姿勢を良くしたいのですがどうすればよいでしょうか。』という依頼をいただくことがあります。書店等にもタイトルに「姿勢」という言葉が含まれた書籍が多く並び、それだけ「姿勢」について関心がある方が増え、姿勢が悪いことで怪我や病気などネガティブな事に繋がることが認知されていると言えます。
 しかし、改善するエクササイズを知っていても正しく行えているのか分からず、また継続することが難しく、改善できていないことのストレスからも姿勢を悪くされているように感じます。

◇姿勢が良いとは?
 そもそも良い姿勢とは何でしょう。インターネットで検索すると「耳・肩・腰・膝・くるぶしが一直線になる状態」と記しているサイトが多く存在します。なぜそれが良いのか。
私たち人間は地球上に存在し、“重力”と共に生活をしています。進化の過程で、重力に抗うだけでなく、遠くまで見渡して敵や獲物を見つけやすくするため、そして両手で物を運び、道具を使用できる姿勢として直立を獲得しました。それゆえ身体の構造は、まっすぐに立った姿勢が機能的となるようにデザインされているのです。
 つまり、耳・肩・腰・膝・くるぶしが一直線に並んでいることは、本来の機能が発揮できる姿勢と言えます。

◇姿勢の悪さを改善
 姿勢を良くする方法の例として、背中が丸い人には背中を反る運動をしましょう、腰が反りすぎている人には腰を後ろに出しましょう、という内容のエクササイズが提案されます。多くの書籍やネットの内容もこのような内容が記されています。この通りに行って改善できれば良いのですが、丸い背中を反ろうとすれば、腰が反るなど、他の部位に悪影響を及ぼすことがあります。

◇伸ばすという意識による変化
 出たところを戻そうとするエクササイズは間違いではなくとも時間や労力を必要とします。それは図1のようなイメージです。ですが図2のように伸ばそうとするとどうでしょう。この意識をきっかけに、出たところが元の位置に戻るかのように一直線になります。(図3参照)

 この伸ばすという意識は、ピラティスの中では “エロンゲ―ション” という言葉で伝えられており、エクササイズの中で軸の伸張を意識することで下記のような効果が期待されます。
 
・前後、左右のバランスの改善
・スポーツやトレーニング、日常生活の動作が変わる。
・身体の安定性が向上する。
・血行が促進される。

◇姿勢を良くするために
 立った時や椅子に座った時、歩く時など、日常生活動作において伸びる意識を取り入れると、今まで使えていなかった身体内部にある、細かい動作に使われるインナーマッスルが使えるようになり、使いすぎていた大きい筋肉(アウターマッスル)の負担が減り、疲れにくくなります。
 この意識が習慣化されることで競技練習やトレーニングにも応用され、効果的に行えるようになります。
この伸びる意識を日常生活に取り入れ、見た目だけでなく、健康的で競技力を高められる身体づくりをしてみませんか。