動作をチェックする
スポーツ医・科学 委員会
動作をチェックする
アスレティックトレーナー 中森 徹(高知県スポーツ科学センター)
トレーニングというと筋肉を肥大させることや、パワー、瞬発力、持久力等を高めることを目的としてスポーツ現場で行われていますが、パフォーマンス向上を目的として行われているこれらのトレーニングは「走る(歩く)」や「しゃがむ」・「立ち上がる」・「止まる」といった日常生活動作が土台となっています。
一般的に健康増進として行われているスクワットもしゃがむ・止まる・立ち上がるという一連の動作をパターン化したもので、しゃがむ動作は重心を下げるため、姿勢を安定させる場面や減速する場面で使われ、この一連の動作スピードを上げるとジャンプ動作になります。
特に地面から離れる瞬間のスピードが速いほど高く跳ぶことができ、特にスピードが必要な競技であればより高く跳ぶことを意識したスクワットジャンプを行い、スピードを向上させます。どれだけスピードが出せるかは垂直跳びなどの体力測定を行うことで確認でき、トレーニング効果を確認することができます。
多くの局面で必要とされる体力をこのスクワットで向上させることができるため、一般の方からスポーツ競技者まで広く行われています。
しかし、膝関節周囲の痛みや腰痛などのスポーツ障害を経験した選手のスクワット動作を見ると、体幹の安定性が保てていなかったり、股関節が使えてなかったりします。強い力は出せてもプレーにつながらないことや、ケガのため練習や試合に参加できなくなります。
そこでこの体幹部の安定性や股関節を機能的に使えるかどうかをチェックする方法として「アクティブ ストレートレッグライズ(以下A-SLR)」を行います。
【方法】
①手のひらと両足のつま先を天井に向け、両膝関節を伸ばして仰向けに寝転ぶ。
②両方の膝関節を伸ばしたまま、片側の股関節を反動つけずにできるだけ屈曲させる。
③下の画像のように、挙げた側の外くるぶし(黄線)が、床側の脚の膝蓋骨中央(白線)よりも上げることができればエラー動作を起こさない程度の体幹部の安定性と股関節の可動性があると言えます。
下の画像のように床側の膝が曲がる場合はやり直します。挙上側の外くるぶしが反対側の膝蓋骨中央程度、またはそれ以下であればスクワットをする前に、体幹部の安定性を高めるためのエクササイズや股関節周囲の可動性を高めるエクササイズを行います。
また床に残している下肢のつま先は天井(上方)に向けた肢位(左下の画像)で行いますが、つま先が外側を向く(右下の画像)場合はやり直します。
外側を向く場合は、外に向き始めた時の挙上脚の位置で評価します。
このチェックを行うことで、機能的な動きができない原因の一部を明確にすることができます。
この動作をする際の呼吸も重要で、止めたり浅くなるのもエラーです。
これらを修正するエクササイズを行うことで、機能的な動作の習得につながります。
ケガが多い、また治りにくい選手はこのテストをして現状を確認してください。