全てのステロイド注射が禁止!! S9:糖質コルチコイドについて ~アンチ・ドーピングの最新情報をチェック~
スポーツ医・科学 委員会
全てのステロイド注射が禁止!!S9:糖質コルチコイドについて
~アンチ・ドーピングの最新情報をチェック~
スポーツファーマシスト 長﨑大武(高知県薬剤師会・プラス薬局)
「糖質コルチコイド」とは、一般的にステロイドと呼ばれているステロイドホルモンのことです。
以前から予告はされていましたが、糖質コルチコイドの禁止対象となる投与経路が拡大されています。糖質コルチコイドの禁止投与経路は「経口・静脈内・筋肉内・経直腸」となっていましたが、現在は「経口(口腔粘膜を含む)、経直腸、すべての注射」が禁止となっています。すでに2021年1月1日から適用されています。
ただし、糖質コルチコイドの禁止は「競技会(時)」※1のみですので、競技会時以外には競技会時検査で検出されるかどうかが問題となるかと思います。
●注射投与の例
静脈内、筋肉内、関節周囲、関節内、腱周囲、腱内、硬膜外、くも膜内、皮内、皮下、病巣内(ケロイドなど)など
今までケガなどの炎症を抑える目的として関節内や腱周囲にステロイド注射をおこなっていた競技者は注意が必要です。
様々な治療に使用されている糖質コルチコイドという物質は、なぜ違反物質となっているのでしょうか。
[理由]
1.エネルギー代謝を活性化させ、競技力を向上させることがあるため
2.抗炎症作用により、ケガをした状態で競技が継続できるため
3.感染症の増悪、続発性腎機能不全、消化性潰瘍が発現する可能性があるため
が、主な理由とされています。
つまり、薬物による競技力向上と健康被害の2点が理由となっているようです。
しかし、本当に治療のためにステロイド注射が必要な場合は使用することが可能です。その場合は該当物質を使用する前にTUE(Therapeutic Use Exemption:治療使用特例)を申請し、取得しなければなりません。緊急治療や救急状態での使用など、一定の条件がそろっていれば遡及的(さかのぼって)TUEを申請することも可能です。
糖質コルチコイドはこれまでも投与経路によって禁止となっていましたが、さらに複雑化されてきています。今まで覚えていた内容と混同しないようにしっかりと整理をしてみましょう。
※1:競技会(時)とは、競技者が参加する予定の競技会の前日の真夜中(11時59分)に開始され、当該競技会および競技会に関係する検体採取手続きの終了までの期間をいう。(2022禁止表国際基準 世界アンチ・ドーピング規程より抜粋)
改訂の詳しい内容については、日本アンチ・ドーピング機構(JADA)や世界アンチ:ドーピング機構(WADA)のホームページから必ずご自身でご確認するようお願いします。
JADAホームページ
https://www.realchampion.jp/