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女性アスリートの体調管理について

女性アスリートの体調管理について

スポーツドクター 藤田 幸子(図南病院 整形外科)

 女性の競技者のコンディションについては、女性特有の月経周期による精神的、身体的症状が重要ですが、10代から20代の女性にとって、コーチや監督に、自分から、相談しにくい大きなハードルかもしれません。

 一般的には、12歳前後で初経を迎え、月経周期(月経のはじまりから次の月経の始まる前日まで)が整ってくると、約30日周期で月経が訪れます。その間、女性ホルモンの変動で、コンディションの変化がおこります。月経周期は、卵胞期、排卵期、黄体期に分かれますが、多くの競技者は、月経直後から数日後の卵胞期に、コンディションが良いと感じています。このような競技者には、試合の日程に合わせて、一時的にホルモン剤(ピル)を服用することによって、月経をずらす月経周期調節法があります。

 10代から、産婦人科医を受診することに抵抗を感じる方も、おられるかと思いますが、アスリートでなくても、月経痛で悩んでいる女性は多く、産婦人科で正しい情報を得て、服用するかどうか相談の上、安全に服用開始時期等を決めることをお勧めします。

 月経には、【1】下腹部痛や、腰痛、下痢、全身倦怠感が強く、日常生活も困難で鎮痛剤の使用量が増えたり、練習も休みがちとなる月経困難症、【2】月経の数日前から、気分が落ち込んだり、体重増加、浮腫、眠気等、精神的に集中出来なくなる月経前症候群、【3】貧血の原因となる経血量の多い過多月経が、月経に伴う症状として、スポーツのパフォーマンスに大きな影響を与えます。

 月経困難症や、月経前症候群、過多月経で悩んでいるアスリートでは、試合に合わせるだけではなく、年間を通じて、低容量ピルの服用で、月経を調節する継続的調節法もあります。ピルを服用することによって、将来、妊娠、出産に問題があるのではと心配される方がいますが、問題はありません。

 女性にとって、初経を迎えてから周期的に訪れていた月経が、スポーツをすることで、不順になったり、無月経になることは、変調のサインとして大切です。

 女性競技者の約40パーセントが月経周期異常だと言われています。運動によって消費するエネルギー量に対して、食事量が充分でなく、体重管理の厳しいスポーツや、過度の減量を強いられるスポーツでは、女性ホルモンが低下し、月経周期異常をきたし、三ヶ月以上月経の止まった無月経となると、骨粗鬆症を引きおこし、疲労骨折を発症して、競技参加が出来なくなったり、生涯にわたり、健康を害することになります。とは言え、女性選手は、男性選手に比べ、月経異常があることが、変調のサインとして有利といえるかもしれません。体重、脈拍、体温に加え、月経の有無、月経痛など女性競技者は、普段から記録して、相談出来る環境を作りましょう。

 女性のライフサイクルは、初経から閉経を迎え、閉経後も、更年期障害や、骨関節疾患という問題も抱えながら、競技生活を送っている方もいます。一人で悩まず、お近くのスポーツドクターや、指導者に相談されることをお勧めします。