運動前のウォーミングアップ
スポーツ医・科学
委員会
運動前のウォーミングアップ
スポーツドクター 喜安 克仁(高知大学医学部付属病院)
2019年はラグビーの活躍、また色々な競技での日本人選手の世界での活躍が報道されました。健康ブームやフィットネスブームなども加わり、若い子供達からご高齢の方も含めて運動を始める方や、トレーニングに熱が入る方も増えてきているのではないでしょうか。皆さんは運動前にはウォーミングアップが必要ですが、どの程度行っていますか?ある調査ではウォーミングアップ習慣の時間は5分以下と短い傾向にあると言われています。それではウォーミングアップにはどのような効果があるのでしょうか。またどの程度必要なのでしょうか。
ウォーミングアップには体温を上昇させる効果があります。体温を上昇させることで筋や関節のスティッフネスが低下し、筋や関節を動かすエネルギー消費を少なくすることができ、エネルギー代謝の効率が上昇します。つまり筋の収縮速度が向上し、パワー発揮が大きくなるためパフォーマンスが向上すると言われています。また心肺機能への影響として、ウォーミングアップで心拍数を増加させることで酸素摂取量を増大させ、活動筋への血流量増加、酸素供給効果が上がります。神経系への影響は、交感神経の活動を活性化し、副交感神経を抑制する効果があり、これは暑さへの耐性向上や神経-筋の伝達速度が速くなるなどのメリットがあります。
ただし体温は40度以上に上昇し過ぎても逆にパフォーマンスが低下すると言われていますので、体温を適度に高めるにはジョギング・体操などの中程度の動的なウォーミングアップを15分程度実施することを目安にしてみてください。
加えてウォームアップを実施することでスポーツ傷害発生率を軽減できるとの報告もあります。スポーツの種類によって傷害の種類が異なりますので、発生しやすい傷害からウォームアップの種類をチームスタッフや運動仲間達とアレンジしてみてはどうでしょう。