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スポーツ障害に対する再生治療

スポーツ障害に対する再生治療

スポーツドクター 上田 英輝(野市中央病院)

 近年、iPS細胞などを使った再生治療が話題になっていますが、スポーツの領域にも様々な再生治療法が行われるようになりました。
 運動器においては靭帯や軟骨は治りにくい組織と言われています。特に、繰り返し動作で起こすような野球肘とかテニス肘、受傷頻度の高い足関節靭帯損傷などは慢性化しやすいため、組織修復を促進する意味で自分の血液を遠心分離してからPRP(多血小板血漿)を取り出して損傷した部位に注射する方法があります。自分の血液成分を使うため安全で、手術のように体を新たに傷つけることがない注射治療であり、復帰までの時間が短いとも言われています。
 また離断性骨軟骨炎や怪我による軟骨欠損などにおいては、軟骨はなかなか再生しないので、今までは健丈な軟骨を採取して移植手術を行うことが標準治療でした。そこで日本独自の技法で軟骨培養に成功し、技術も確立したことから、健常部分をほとんど犠牲にすることなく移植手術を行うことが可能になっています。治癒までの時間はかかりますが、これも自分の軟骨細胞を使いますので安全性が高い治療法と言えるでしょう。
 ただし、これらの方法は国の認可や厳しい施設基準、医師の手技習熟が必要であり、どこでも受けられる治療ではありません。また方法によっては健康保険もききませんので安易に受けられるものではありませんが、将来を期待させる治療法といえます。