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スポーツ選手のコンディションチェックについて

スポーツ選手のコンディションチェックについて

川上 照彦(吉備国際大学)

 スポーツ選手が最高のパフォーマンスを発揮するにはコンディションを整えておくことが重要です。そのためには普段から自分の体の状態をよく知っておくことです。高知県では高知国体の頃より、各スポーツ団体より推薦された選手にメディカルチェックを行い、異常のみられる選手については病院への受診を勧め、障害予防対策のアドバイスを行ってきました。しかしメディカルチェックは高知県在住のすべてのスポーツ選手を対象にしているわけではありません。また、1年に一度の検査ですから状態の変化についていけません。競技スポーツを行っている選手は当然試合に勝つためにトレーニングを行っています。健康スポーツと違い、極限近くまで自分を追い込み、スポーツ障害が生じる寸前まで練習をしています。コンディションが悪いとスポーツ障害をおこしてパフォーマンスが低下するだけでなく、選手生命まで失ってしまうこともあります。したがって、スポーツ選手は普段から自分の体をよく知り、その変化に敏感でなければなりません。誰か信頼できるトレーナーがついていればよいのですが、プロスポーツと違い自分専用のトレーナーを雇っている人はいません。自分で自分をケアしながらスポーツを続けるしかないのです。そのためにはセルフメディカルチェック、自分で自分のメディカルチェックを行い、早期に体、精神の疲労を知り、障害が生じる前にケアをし、スポーツ障害を未然に防いでいくことが大切です。
 日本スポーツ協会のメディカルチェックの最初に、自分のコンディションを知る項目があります。1)記録が低下してきた 2)練習についていけない 3)練習がこなせない 4)以前は楽にこなせた練習が今はきつい 5)練習意欲が湧かない 6)疲れやすい 7)疲労がたまっている 8)体がだるい 9)力が入らない 10)たちくらみがひどい 11)かぜをひきやすい 12)体重の変動が大きい 13)体重が減少している 14)体重が増加している 15)寝つきが悪い 16)熟睡できない 17)早く目が覚める 18)朝起きるのがつらい 以上の18項目ですが、どれも当然といえば当然の項目です。以前に、競技スポーツ選手80名を対象に、コンディションチェックのアンケート調査をしたことがあります。パフォーマンスの低下とこれらの項目との相関を調べると、見事に相関関係がありました。月に一度は体重を測り、変化を見ていく必要があります。睡眠時間についての調査研究もあります。21か月のスポーツ選手の観察で、ケガの割合を調べると、9時間睡眠時間をとっているスポーツ選手のケガの発生率が20%弱であるのに対し、6時間の選手は75%の高率だったというものです。普段の健康チェックがいかに重要かわかると思います。