> 股関節の硬さが投球障害を引き起こす-松坂大輔、股関節がガチガチに硬く、肩関節障害で引退-

股関節の硬さが投球障害を引き起こす-松坂大輔、股関節がガチガチに硬く、肩関節障害で引退-

股関節の硬さが投球障害を引き起こす
-松坂大輔、股関節がガチガチに硬く、肩関節障害で引退-

スポーツドクター 川上 照彦(吉備国際大学)

 昨年、プロ野球、西武の松坂大輔投手の引退セレモニーが行われ、「最後は普通に投げられなくなるまで野球を続けることができて幸せでした」とファンに感謝の気持ちを伝えました。松坂投手は平成の怪物と云われ、甲子園の決勝戦ではノーヒットノーランで優勝投手となり、春・夏を連覇、西武ライオンズを経て、大リーグのレッドソックスでワールドシリーズを制覇、またWBCでも優勝を経験するなど大活躍をしました。しかし、晩年は肘関節、肩関節の障害に悩まされ、何度かの手術を受けましたが、結局41歳の時、古巣の西武ライオンズで引退となりました。複数の野球関係者の指摘では、松坂選手は股関節が硬く、下半身の力を上半身にうまく伝えられず、上体だけで投げる形となり、肩関節、肘関節に負担がかかり、障害を起こしたのだということです。たまたま11月3日に放送された「ぐるナイ」ゴチに引退した松坂選手が出演しており、番組内のゲームであぐらをかく場面がありました。その時松坂選手は股関節の開きが悪く、あぐらをうまくかけず、コロコロ転がっていました。まさに股関節の硬さを証明する場面でした。『頸部・胸腰部・股関節回旋角度の左右差に着目した投球障害予測』(体力医学 第62巻 第3号)の研究論文でも、頸部、胸腰部の可動域制限に加え、股関節の動きの悪さ、特に回旋制限が投球障害に関係するとの結論が発表されています。


 簡単な股関節の硬さのチェック方法を紹介します。図1は代表的な股関節の硬さをチェックする方法で、Patrick testと呼ばれています。図の如く臥位にて一方の足関節を膝の上部に置き、股関節を下腿が床と水平位になるまで開排した時、水平まで下がらないものや股関節部、臀部に痛みを訴えると要注意とします。痛みの訴えのあるものは股関節や仙腸関節の疾患が隠れている時もあります。


 図2は股関節の内旋角を調べる方法です。回旋角度でも特に内旋角の制限が肩関節や肘関節の障害に関係するとの報告が多く、特に重要な角度です。図の如く伏臥位とし、大腿を閉じたまま股関節を外側に回旋させます。左右差のあるものや45°以下を陽性とします。これは臀部の深いところにある股関節外旋筋群の拘縮を表します。左右差のある場合は、股関節障害そのものも疑います。
 以上、代表的な股関節の硬さを調べる方法を紹介しましたが、陽性の場合は、障害予防のためにも十分なストレッチを行ってください。また、痛みを伴う場合など股関節疾患そのものが疑われる場合は整形外科への受診をおすすめします。