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アンチ・ドーピングの最新情報をチェック ~うっかりドーピングを防げ!~

アンチ・ドーピングの最新情報をチェック~うっかりドーピングを防げ!~

スポーツファーマシスト 長﨑大武(高知県薬剤師会・プラス薬局)

糖質コルチコイドの口腔内局所使用について

2021年3月22日付で世界アンチ・ドーピング機構(以下、WADA)は、競技会時の糖質コルチコイドの口腔内局所使用を禁止しました。

「口腔内局所使用」の例として、口腔軟膏、口腔内局所貼付剤などがあります。
口腔用で使用されている糖質コルチコイドは、主に「口内炎」や「口唇炎」の治療で使用されている医薬品です。また処方が無くても、薬局やドラックストア等で購入することが可能です。
「競技会(時)」とは、アスリートが参加する予定の競技会の前日の午後11時59分に開始され、当該競技会及び競技会に関する検体採取手続きの終了するまでの期間を指します(世界アンチ・ドーピング規程 定義)

アスリートの方々には、世界アンチ・ドーピング規程における「競技者の役割及び責務(21.1.3 アンチ・ドーピングとの関連で、自己の摂取物及び使用物に関して責任を負うこと)」の観点から、以下の対応が推奨されています。

<以前使用したことがあるアスリートの方>
 ◆服薬履歴をつけること(最終使用日、商品名、使用期間等)

<現在使用しているアスリートの方>
 ◆速やかに使用を中止し、禁止物質を含まない他の治療薬へ変更すること
 ◆服薬履歴をつけること(最終使用日、商品名、使用期間等)
 ◆(手元に医薬品が残っている場合には)手元にある医薬品を保管すること

日本のアスリートのドーピングの多くが、意図的なドーピングではなく、治療薬やサプリメントに含まれる禁止物質をうっかり摂取したことによるドーピングが大半になります。アスリート自身が責任を持って情報を確認していく必要があります。

世界アンチ・ドーピング規程の改訂

世界アンチ・ドーピング機構(World Anti-Doping Agency;WADA)が公開する「世界アンチ・ドーピング規程」(World Anti-Doping Code;以下「CODE」)が6年ぶりに改訂され2021年1月から施行されました。このCODEは、フェアでクリーンなスポーツを守り、クリーンなスポーツに参加するアスリートの権利を守るためのものです。また、CODEは全世界・全スポーツで共通のもので、スポーツに参加するみんなの約束事でもあります。
CODEは、2003年に初めて採択され、2004年に発効されました。その後、2009年、2015年に改訂され、今回の2021年版は3回目の改定版となっています。アンチ・ドーピングは社会全体で取り組むべき活動で、社会におけるスポーツやアスリートの在り方、テクノロジーや医学の進化などに合わせて、そしてドーピングの傾向などを踏まえ、より良いものになるために進化しています。

◆主な改訂点
  ◉CODEに付属する国際基準として、新たに「教育」と「結果管理」の2つが追加
  ◉アンチ・ドーピング規則違反として「ドーピングに関する通報者を阻止したり、
   通報に対する報復すること」という項目が追加
  ◉アスリートの役割と責務では「サポートスタッフの身分を開示すること」が追加
  ◉アンチ・ドーピング規則違反に対する制裁では、事情によっては制裁期間を加重したり、
   標準の制裁期間の上限が永久停止まで引き上げられるなど厳罰化される一方、
   未成年などの「要保護者」と一定レベル以下の「レクリエーション競技者」には制裁措置が軽減された。
  ◉禁止表では、新たな概念として「濫用物質」と「特定方法」が追加

改訂の詳しい内容については、日本アンチ・ドーピング機構(JADA)や世界アンチ:ドーピング機構(WADA)のホームページから必ずご自身でご確認するようお願いします。
 JADAホームページ
 Athlete_Guide2021_Code_Japanese_LIVE.pdf (realchampion.jp)