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アンチ・ドーピングに関するルールって知っていますか?

アンチ・ドーピングに関するルールって知っていますか?

スポーツファーマシスト 長﨑大武(高知県薬剤師会・プラス薬局)

アンチ・ドーピングに関するルールって知っていますか?

 日本におけるアンチ・ドーピングに関するルールは、日本アンチ・ドーピング機構(JADA)によって策定された「JADA規程」によって定められています。JADA規程はインターネットでも簡単にJADAのサイトから確認ができます。
JADA規程では、
・アンチ・ドーピングの規則違反になる行為
・違反の摘発のための手続き
・違反に対する制裁
・違反の有無や制裁の判断のための手続き
など、アンチ・ドーピング活動に関する重要な事項について定められています。JADA規程の根幹部分は、世界アンチ・ドーピング規程(WADA規程:World Anti-Doping Code)とほぼ同じものとなります。つまりアンチ・ドーピングに関するルールは世界中で共通のものと言えます。

アンチ・ドーピングに関するルールは変わる!

 WADA規程やWADA規程と連動して改訂されるJADA規程は、ドーピングの最新動向を反映して、数年に1回の改定が行われています。特にアンチ・ドーピング規則違反になる物質の使用や方法を具体的に記載された一覧表の「世界アンチ・ドーピング規程 禁止表国際基準」(The Prohibited List)については、急速に進展するドーピングの最新動向を迅速に反映させるため少なくとも1年に1回(毎年1月1日)改定が行われています。一覧表の中では「常に(競技会(時)及び競技会外)」と「競技会(時)においてのみ」によって、物質と方法が記載されており、ドーピング検査の実態形態により、禁止となる物質と方法が異なります。これはWADAが定めて、日本においてはJADAによって和訳され公開されています。こうしたルールの改定は非常に重要です。どのような行為や物質がルール違反になるのか、ルールの改定は特に注意しておく必要があります。

「知らなかった」は通用しない!

 2020年に引退表明した元世界ランキング1位のテニスプレイヤーのマリア・シャラポアさん(ロシア)のドーピング違反は世界中に衝撃を走らせました。2016年1月に開催された全豪オープンの開催中に行われた検査において禁止物質「メルドニウム」が検出されました。シャラポアさんは健康上の理由のために使用していたというメルドニウム。日本では認可されていないため販売はされていませんが、ロシアでは心臓の治療薬の一種として薬局で購入できるほど世間に浸透しているもののようです。このメルドニウムはWADAによって2016年(1月1日)より禁止物質に指定された薬物でした。
 シャラポアさんは「大事なことなので理解してもらわれなくてはなりませんが、過去10年間、この薬品はWADAの禁止リストに含まれず、私は10年間、合法的に使っていました」「けれども1月1日にルールが変更され、メルドニウムは禁止薬物になった。そのことを私は知りませんでした。12月22日にWADAから禁止対象リストの変更についてメールを受け取ったけれども、対象薬物一覧のリンクを私はクリックしなかった」と述べ、その件に関しては「自分の無責任さが招いたこと」と全面的に自らの非を認めています。
 禁止薬物違反薬物と知っていようが知らなかったであろうが違反は違反。シャラポアさんは結果的に15か月の資格停止の制裁を受けることとなりました。

最新の情報を確認しておくことが重要!

 今までの話の通り、アスリートはもちろん、アスリート以外の人も、禁止表およびその改訂事項の効力発生日以降、禁止表およびその改訂事項に拘束され、最新版の禁止表とその改訂事項について認識しておく責任を負っています。最新版の禁止表はJADAのサイトで日本語翻訳されたものを入手することができます。必ず確認するようにしてください。