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年齢とスポーツについて

年齢とスポーツについて

スポーツドクター 藤田 幸子(図南病院)

 私達の住む、ここ、高知県においても、スポーツを楽しむ年齢層は、子供から成人、高齢者までと幅広く、その年齢層によって起きる外傷や、障害は異なっています。

 発育途上の子供では、骨の両端に、成人と異なる骨端線と呼ぶ軟骨部分があり、日々、骨が成長して長くなっていくため、骨は未完成です。骨の完成は、女子では16年、男子では18年かかると言われています。そのため、子供の成長途上の軟骨は、力学的なストレスに弱く、骨折を起こすような強い外力でなくても、反復する衝撃で成長過程に障害を起こして、痛みをおこします。(野球肘や少年サッカーによる足関節障害など)また、未完成な骨は、反復する運動外力の結果、疲労骨折(過労性骨障害)も気づかないうちに発症しています。骨が急激に伸びていくのに比べ、成長に伴う十分な筋力が対応していないために、筋肉や腱が骨に付着する部での損傷や、腰痛、膝痛が起こります。成人と比べて、柔軟な子供の関節は、関節をつなぐ靭帯が骨より強く、捻挫など靭帯の損傷より、骨端線損傷や骨折を起しやすくなっています。

 一方、成人や中高年では、加齢に伴い骨量、筋肉量が低下しています。特に下肢の筋肉量は、低下が早く60歳で、20歳時の20%~40%減となっています。また、子供と異なり、成長の終わった骨の両端にある関節軟骨成分は、加齢に伴い摩耗、変性がおこってきます。関節、筋肉の柔軟性、腱の弾力性も関節の可動域も低下しており、子供ではおこりにくい筋肉の肉離れ、腱、靭帯損傷(靭帯断裂やアキレス腱断裂、肩の腱損傷など)を起こします。内科的にも、高血圧、高脂血症、糖尿病、虚血性心疾患等を、潜在的に発症していることもあり、日常生活では健康であっても、生理的に疲労からの回復が減弱しています。

 スポーツは、子供の心身形成にはもちろん、成人や中高年の健康維持、人生の楽しみのひとつとしても、怪我や障害を起こさないようにすることが、大切です。
子供には、競技会に参加するレベルであれば、成長に伴いメディカルチェックが必要ですし、成長障害をもたらす過度な運動は避けなければなりません。
成人や中高年では、加齢に伴って、身体の形態、運動機能、感覚機能、自律神経機能の低下がおこっていること、健康診断や、医療機関でチェックを受けるなどして、自分のからだの状態を理解すること。十分なストレッチや、生活習慣の変化に気をつけ、過度な運動や勝敗、成績にこだわりすぎないことが、外傷や障害を予防することにつながります。
どの年齢層でも、スポーツ以外でも、健康管理には、運動、栄養、休養は、重要です。適切な知識を持って、長く、スポーツを楽しむことをお勧めします。